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岡山地方裁判所 昭和48年(わ)98号 判決 1976年2月27日

本籍

岡山県倉敷市阿知一丁目五八七番地

住居

同市阿知一丁目九番五号

会社役員

福島栄一

大正一四年五月八日生

本籍

朝鮮慶尚北道漆谷郡仁洞面玉渓洞

住居

米子市祇園町一丁目一五

会社役員

山川起正こと金正洙

大正一五年一月二二日生

右の者らに対する法人税法違反被告事件につき当裁判所は検察官田井正己出席のうえ審理を遂げ、次のとおり判決する。

主文

被告人福島栄一を罰金二〇万円に、同金正洙を罰金一五万円に各処する。

右罰金を完納することができないときは、金二、〇〇〇円を一日に換算した期間当該被告人を労役場に留置する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人福島栄一は、米子市明治町八番地に本店を置きパチンコ遊戯業を営む毎日商事有限会社の代表取締役、被告人金正洙は同会社の取締役であるが、被告人両名は共謀のうえ、同会社に対する法人税を免れようと企て、昭和四六年一月一日から同年一二月三一日までの間の事業年度における同会社の所得金額は一九、〇四三、五四五円で、これに対する法人税額は六、六七〇、七〇〇円であるのに、同会社の売上げの一部を除外して公表帳簿に計上せず、これによる簿外利益を偽名で銀行預金するなどの行為により所得の一部を秘匿したうえ、昭和四七年二月二九日所轄の米子税務署長に対し、所得金額は三、九二五、三〇〇円で、これに対する法人税額は一、一三三、六〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により法人税五、五三七、一〇〇円を逋脱したものである。

(証拠の標目)

一、被告人両名の当公判廷における各供述

一、被告人福島栄一、同金正洙(四通)の検察官に対する各供述調書

一、被告人福島栄一(昭和四七年一一月一日付・同年一二月一二日付を除く五通)、同金正洙(八通)の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一、安川典江の検察官に対する供述調書二通

一、金正洙作成の昭和四七年八月九日付(三通)、同月一〇日付各上申書

一、金正洙・坂上功吉作成の各答申書

一、朴再香の検察官に対する供述調書

一、山本高司・乗松信行・木下正美・小原尚作作成の各証明書

一、松浦孝保・山崎雄幸・田中義人作成の各上申書

一、検察事務官江田希作成の報告書

一、郭永玉・愼順任の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一、吉賀正作成の末払事業税計算説明資料

一、毎日商事有限会社に関する登記簿謄本

一、押収にかかるノートブック一冊・金銭出納帳一冊・売玉替玉計算書二枚・総勘定元帳一冊・不動産売買契約書二通・契約書一綴・国有財産売買契約書等二綴・手帳一冊・法人税決議書一冊・メモ帳一冊(昭和四九年押第七五号の一ないし七、一〇、一一、一二)

(法令の適用)

刑法六〇条・法人税法一五九条一項(罰金刑選択)刑法一八条

(弁護人の主張について)

弁護人は、

(一)  昭和四六年一月一日から同年三月七日までの間、安川典江が毎日商事有限会社の経営を掌握していたし、その利益を自己に帰属させていたので、この期間の所得に関する税逋脱について被告人両名は責任がない。

(二)  毎日商事有限会社は昭和四六年度において被告人両名から六三、〇〇〇、〇〇〇円を借り受けているのであり、この借金に対する利息金債務を損金として計上すべきである。

旨主張する。よって、先ず右(一)の主張について考察するに、前額証拠によれば、安川典江が毎日商事有限会社の昭和四六年事業年度において最初の二ヶ月間売上除上による利益を得ていたが、この利益はまさに同会社に帰属した収益の処分と考えられるものであり、右利益処分の経過如何は同会社の収益性を左右するものではない。加之、本件において、被告人両名は、右の事実を熟知したうえ、さらに、自ら売上金の一部を除外するなどして同会社の右事業年度の所得が多額にのぼったことを十分認識しながら、判示のとおりの確定申告をしていることが明らかであるから、同会社の判示税逋脱全体について、被告人両名はその責任を免れることができないものといわねばならない。つぎに右(二)の主張について考察するに、本件全証拠によっても、毎日商事有限会社と被告人両名との間に、弁護人主張の借入金に対する利息に関し何らかの約定がなされた事実も、右利息支払の事実も認められないから、右主張も採用するに由ないところである。

よって主文のとおり判決する。

(裁判官 渡辺宏)

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